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2022年9月24日実技part2

2022年9月24日実技part2

part2 問題文

●設 例●
会社員のAさん(46歳)は、勤務先の社宅(都心に所在、3LDK、70u)で妻Bさん(45歳、専業主婦)と長女Cさん(19歳、大学生)との3人で暮らしているが、社宅が来年2月に売却されることが決まり、転居先を検討している。以前から庭付きの戸建て住宅に憧れがあったAさんは、4,000万円程度で購入できる物件を探していたところ、不動産業者から、都心からやや離れた郊外にある中古の戸建て住宅(甲物件)を紹介された。Aさんは、甲物件の広さや周辺環境には満足しており、通勤時間は今より1時間ほど延びてしまうが、会社が働き方改革の一環としてリモートワークを推進していることもあり、それほど問題はないと思っている。一方、妻Bさんは、都心から離れることにはやや抵抗があるが、昨今の住宅価格の動向から甲物件でもやむを得ないと思っている。
不動産業者によると、甲物件について、「現在住んでいる売主は、今年度中に転居する予定で、売出価格は5,000万円です。いつでも内見してもらってかまいません」とのことである。Aさんは、来月にも内見するつもりでいるが、住宅を購入するのは初めての経験であり、後日後悔することがないように、どのような点に注目して確認すればよいのか知りたいと思っている。また、妻Bさんとも十分に相談したいと思っている。

【甲物件(土地・建物)の概要】
・土地:第一種住居地域、地積300u、固定資産税評価額2,000万円
・建物:木造2階建て、延べ面積120u、4LDK、築15年、固定資産税評価額800万円
・売出価格:5,000万円
・これまで大きな補修・修繕は特段行っていない。

Aさんは、先日、父親Dさん(72歳)に、住宅の購入を検討しているが、昨今の住宅価格の上昇もあり都心部で探すのは難しいこと、郊外の物件でも少し予算を超えてしまうことを話したところ、1,000万円程度の資金を援助してもよいとの申出を受けた。さらに、「投資用として都内に所有している賃貸マンション(3LDK)が先々月から空室となっているので、住んでもらってもかまわない。その際、家賃にはこだわらないが、将来の相続のことを考えたら、形式上、固定資産税・都市計画税程度の家賃で賃貸借したほうが税金面で有利かもしれない」とのことであったが、その方法に問題はないのかどうかAさんにはわからない。

【父親Dさんが所有している投資用マンションの概要】
・RC造20階建て、総戸数270戸、築15年、最寄駅から徒歩7分
・物件は5階に所在、専有面積75u、3LDK、時価8,000万円
・固定資産税・都市計画税は年間30万円、管理費・修繕積立金は月額25,000円
・月額賃料25万円で賃貸募集中であるが、周辺では賃貸マンションの供給が多く、成約するには募集賃料を引き下げる必要がありそうである。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.中古の戸建て住宅を購入するにあたって特に気をつけなければならない点について、土地部分と建物部分に分けて教えてください。
3.Aさんが父親Dさんから住宅取得資金の贈与を受けた場合の課税関係を教えてください。
4.仮にAさんが父親Dさんが所有するマンションに固定資産税・都市計画税程度の家賃で居住し、父親Dさんの相続が開始した場合、当該マンションはどのように評価されるのか教えてください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
Aさんには住宅の購入経験が無いため、Aさんが今回の甲物件の購入検討のおいて重視した点、妥協した点等、Aさん自身の希望を良く確認することが必要。
同時に、同居する妻Bさんや長女Cさんの希望についても確認し、家族間で認識の齟齬が無いように努めることが必要。
また、現状では物件価格やスペックしか把握できていないため、住宅ローンの利用予定の有無や頭金の金額、今後のライフプラン等を確認した上で、無理のない住宅取得計画になっているかの確認が必要。
なお、将来的な相続についても、他の推定相続人の有無等をAさんから確認しておくことが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、将来的に甲物件の売却をする際も問題なく売却可能か、投資用マンションが今後安定して収益を発生させられるか、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。

2. 中古の戸建て住宅を購入する際、土地・建物で特に留意すべき点

●土地について
都市計画区域内・準都市計画区域内では、建築物の敷地は、建築基準法に規定する幅員4m以上の道路に2m以上接している必要がある(接道義務)。接道義務に違反している土地では、建物の増改築や再建築が禁止されるため、購入前に図面で確認することが必要。
また、敷地と道路との段差や水はけ、ハザードマップ等についても確認し、現在だけでなく過去や将来予見される災害情報を収集することで、当該土地の購入が自身の希望に沿うものであるかの確認が必要。

●建物について
宅地建物取引業者は、中古住宅・建物の売買や交換の媒介契約を締結する際に、売主や買主に対して、建物状況調査(インスペクション)を行う業者のあっせんに関する事項(あっせんの可否や、顧客の意向に応じてあっせんする旨)を記載した書面の交付が必要となる。

甲物件の場合、築15年でこれまで大きな補修・修繕が行われていないことから、今後近いうちに水回り・壁等に補修・修繕が発生する可能性が無いか、建築士等の協力を仰いで現状の確認が必要と思われる。
よって、甲物件を紹介した不動産業者に対し、建物状況調査(インスペクション)の取扱い状況について確認することを提案する。

3. 住宅取得資金の贈与を受けた場合の課税関係

父親から住宅取得資金の援助を受ける場合、暦年贈与・相続時精算課税・直系尊属からの住宅取得資金贈与により税負担を軽減しながら資金援助を受けることが可能。
特に、直系尊属からの住宅取得資金贈与は、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、取得する住宅が省エネ等住宅の場合は1,000万円、省エネ等住宅以外の場合は500万円まで非課税となる。

直系尊属からの住宅取得資金の贈与の非課税を受けるには、贈与年の合計所得金額2,000万円以下であることが必要で、取得する家屋の床面積は50u以上240u以下であることが必要。ただし、合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積40u以上240u以下の家屋も適用対象

本問には合計所得金額の記載はないが、床面積は適用対象であり、特例適用となる可能性は高いと思われる。

4. 父親が所有するマンションに固定資産税・都市計画税程度の家賃で居住した場合の相続税評価

個人(親子等)間で土地を使用貸借する場合、地代を支払ったとしても、その土地の固定資産税以下であれば、土地の使用貸借とみなされ、贈与税等の課税関係は発生しない
よって、長男に固定資産税・都市計画税程度の家賃で賃貸マンションを賃貸借した場合、個人間の使用貸借として原則贈与税はかからないが、相続時には自用地評価となることに注意が必要。

父親とすれば、長男への賃貸借契約により、土地は貸家建付地、建物は貸家として、借地権や借家権分を控除した相続税評価額となることを期待したと思われるが、上記の通り、自用地となる可能性が高い。

なお、甲物件の購入と投資用マンションへの入居のいずれかを勧めるかは、現在の情報だけでは判断が難しい。
妻の希望を鑑みれば都心の投資用マンションにメリットが多いと思われるが、相続税対策としての有効性は乏しい。ただし、そもそも27戸のうち1戸でも時価8,000万円であり、相続発生時にはかなりの相続税負担が予想されるため、1戸の相続税評価ではなく、相続財産全体の対策を検討すべき規模感と思われる。
他方、甲物件の購入に関しては、Aさん自身の要望には沿っている可能性が高いと思われるものの、家族の要望や将来の資産性を考慮すると、すぐに問題無い選択として勧めることは難しい。

従って、顧客には自身や家族の要望と、自身の資産状況や資金計画について情報収集してもらいつつ、FPは父親Dさんに対し、将来発生する相続に係る遺産分割や相続税負担について、ヒアリングを進めながらまずは情報整理を行うことが必要と思われる。

5. 関与すべき専門職業家

甲物件の購入における、土地・建物の所有権移転登記等については司法書士、課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。
なお、甲物件の測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士、建物の修繕状況に関する建物状況調査(インスペクション)については建築士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】いと FP1級実技 2022/9/24 part2 面接

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