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2022年10月2日実技part1

2022年10月2日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、地方中核都市に所在するX株式会社(非上場会社・家具製造業)の代表取締役社長である。X社は、約40年前にAさんと弟Eさんの2人で設立した会社であるが、業績は堅調に推移し、従業員70人超の規模に成長した。5年前、弟Eさんが病気により他界し、弟Eさんが所有していたX社株式は、甥Fさん(40歳、弟Eさんの子)が承継した。

【事業承継について】
Aさんは、自身の年齢のことも考え、数年のうちに勇退するつもりでいる。X社は、Aさんの実家があった土地に本社兼工房があり、X社株式は、Aさんが51%、甥Fさんが49%保有している。
大手家具メーカーに勤務していた甥Fさんは、弟Eさんの死亡後、X社に入社した。現在はオフィス部門の責任者を務め、取引先・従業員からの信頼は厚い。Aさんは、弟Eさんとの約束もあり、甥Fさんを後継者として考えており、甥Fさんにもその自覚がある。
なお、Aさんには長女Cさん(37歳)と二女Dさん(34歳)がいるが、いずれもX社の経営にはまったく関心がない。Aさんは、2人の子はX社の事業承継とは関係がないと思っているが、相応の資産は残してやりたいと思っている。

【資産承継について】
現在、Aさんの自宅と弟Eさんの旧宅(空き家)が建っている甲土地(地積800u)は、父親の相続により、Aさんと弟Eさんがそれぞれ各2分の1の共有持分で取得したものである。弟Eさんが所有していた持分は、甥Fさんが相続により取得している。Aさんはこの共有状態を将来の相続を見据えて解消しておきたいと考えている。

Aさんは、X社に蓄えた余剰資金を利用して、所有しているX社株式のすべてを金庫株によりX社が買い取ることにすれば、甥Fさんが経営に必要な議決権割合を確保できるのではないかと思っている。あるいは、甥Fさんが所有している甲土地の持分とそれに見合うX社株式を交換することで、X社株式の移転と共有状態の解消を併せて実現できるのではないかと思っている。Aさんは、これらの方法に問題はないのかどうかアドバイスを求めている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金  : 1億円
2.X社株式 : 3億600万円
3.甲土地(800u、甥Fさんとの共有) : 8,000万円(1/2の持分相当)
4.自宅建物(築15年) : 2,000万円
5.X社本社兼工房土地(600u) : 1億1,000万円(注)
6.月極駐車場(400u) : 5,000万円

合計 : 6億6,600万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約2億円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。
(注)X社は土地の無償返還に関する届出書をAさんと連名で税務署に提出し、Aさんに通常の地代を支払っている。

【X社の概要】
資本金:5,000万円 会社規模:大会社 従業員数:72人 配当:実施なし
売上高:14億円 経常利益:6,000万円
純資産:10億円(余剰資金5億円、分配可能額9億円)
株主構成(発行済株式総数10万株):Aさん51%、甥Fさん49%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額6,000円/株、純資産価額10,000円/株
※X社株式は譲渡制限株式である。

【Aさんの推定相続人】
妻Bさん(65歳) :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長女Cさん(37歳):専業主婦。これまでX社の経営に関与したことはない。会社員の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。
二女Dさん(34歳):会社員。これまでX社の経営に関与したことはない。Aさんと自宅で同居している。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3. 事業承継税制の特例の活用の留意点

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、全株式を税負担なく移転可能(納税猶予割合100%)

ただし、非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2024年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(株式の贈与は2027年12月31日までに実施)。
なお、後継者は贈与時には役員就任期間が3年以上、相続発生時に役員であることが必要。

本問の場合、甥に承継する場合は役員就任期間の要件を満たすことが必要となることから、早めに特例適用の準備を進めていくことを提案する。

4. 金庫株の取り扱いと共有不動産の解消

事業承継税制でAさんから甥Fさんに株式を移転した場合、相続税負担は発生しないものの、財産価値のある株式を無償で移転させてしまうことから、Aさんの配偶者や子どもたちに不満が発生する可能性がある。
そのため、Aさんが検討している2つの移転方法については、遺族に適切に資産承継できる方法を検討する必要がある。

●Aさんが所有するX社全株式のX社による買い取り(金庫株)
業績が堅調で純資産も潤沢なX社が、Aさん保有株式を数年にわたって金庫株として買い取ることが提案できる。
これは、一度に全ての保有株式を買い取ると、X社の経営リソースに影響を与える可能性があり、税務面ではみなし配当所得として総合課税となることから、所得税負担も多大なものとなることを避けるためである。
つまり、数年にわたって少しずつ金庫株として買い取ることで、Aさんの株式保有を割合を段階的に下げて過半数以下として実質的に弟Bさんに事業承継し、毎年の所得税負担もほどほどに抑えられるメリットがある。

また、Aさんの株式保有割合が過半数未満となった後で相続が発生すれば、株式を取得する遺族は相続税の申告期限の翌日以後3年以内(相続開始後3年10ヶ月以内)に発行会社に譲渡することで、みなし配当課税を回避可能となる。

●甥Fさんの甲土地持分とAさん所有のX社株式の交換
不動産持分と株式の交換のように異なる種類の資産の交換の場合、実態としては交換であっても、税務上ではそれぞれ譲渡所得が発生していることとされ、譲渡所得税の負担を負うことになる。
個人が非上場株式を他者に譲渡した場合、株式等の譲渡所得として20.315%(復興特別所得税含む)の申告分離課税の対象となり、不動産の持分譲渡については、所有期間5年超の長期譲渡所得(所得税15.315%・住民税5%)として分離課税の対象となる。
よって本問の場合、税負担を考慮するならば、不動産持分と株式の交換ではなく、甲土地のうちAさんの自宅部分と弟Eさん旧宅部分で分筆することで共有状態の解消を図る方が適切と思われる。

なお、一筆の土地を現物分割する場合、まず土地を法務局で分筆登記する。
分筆された土地は各共有持分者による共有のままのため、それぞれ持分全部移転登記することで、それぞれ単独所有の土地二筆とすることができる。
※つまり、文筆した後もそれぞれの土地にお互いの所有権(持分)が残ったままなので、持分全部移転登記でお互いの所有権(持分)を解消することが必要。

また、現物分割の場合、共有持分に応じて現物分割すると、資産の譲渡や贈与に該当せず、課税されない(土地のように、効用を一にする一個の共有資産の場合)。
共有持分に応じた分割として、土地であれば面積を基準にした分割だけでなく、価額に応じて分割面積を定めても、面積算定が合理的なものであれば、認められる

5. 事業承継後の株主構成と資産承継

安定した企業経営の継続のためには、贈与税の納税猶予特例・金庫株・後継者の役員給与の増額等による株式譲渡といった対策を組み合わせ、できるだけ後継者に株式を集約させることが望ましい。
よって本問の場合、X社株式については金庫株等により甥Fさんに集約し、Aさんの財産はできるだけ分割しやすい資産にしておくことが望ましい。

X社本社兼工房土地についても、いずれはX社もしくは後継者である甥Fさんに所有権を移転する方が、企業経営上望ましいと思われる。X社の余剰資金は潤沢であり、金庫株としてAさんのX社株式を買い取ったとしてもなお、X社本社兼工房土地を購入できるだけの資金はあると思われるため、時期を検討しながら移転を進めていくべきと思われる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・資産承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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