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2023年2月4日実技part2

2023年2月4日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(73歳)は、大都市圏近郊のS市内にある甲土地上の甲建物に1人で暮らしている。甲土地と甲建物は、3年前に死亡した夫Bさんから相続により取得した。
甲土地は、夫Bさんが40年前に父親の相続により取得したものである。また、甲建物は、夫Bさんが20年前に既存の家屋を取り壊し、2階建ての家屋に建て替えたものである。その際、夫Bさんは、「将来、甲土地の一部を売却するときのことを考えて、敷地の西側半分に建て、玄関は南側になるようにし、東側は庭と駐車スペースにしよう」と言っていた。
Aさんと夫Bさんは、22年前に婚姻し、いずれも再婚であった。Aさんには離婚した前夫との間に子Cさん(50歳)がおり、夫Bさんには死別した前妻との間に子Dさん(50歳)と子Eさん(48歳)がいるが、それぞれ相手の子とは養子縁組をしていない。子Cさんは、隣のT市内に所有している戸建て住宅で妻子と暮らしており、S市に住む意向はない。
なお、夫Bさんの相続時、遺言書はなく、遺産分割協議により、Aさんが甲土地と甲建物を、子Dさんと子Eさんが金融資産(各3,500万円)を相続した。夫Bさんが所有していた自家用車は、Aさんが普通免許を持っておらず、既に処分した。

【Aさんの所有財産の概要】
・現預金:1,000万円(収入は遺族年金を含む年金月額18万円)
・甲土地:地積270u、形状は間口15m、奥行18mの長方形
・甲建物:鉄骨造2階建て、延べ面積100u(1階部分80u)、固定資産税評価額600万円

Aさんは、心身ともに健康で、周辺に友人も多く、甲建物で生涯を送りたいと考え、屋根や外壁の塗替え、バリアフリー対応や、洗面や風呂などの水回り設備の入替えなどのリフォームを行うべく、先日見積りを取ったところ、合計800万円かかるとのことであった。しかし、今後のことを考えて、手元の現預金は減らしたくないと考えている。
子Cさんは、Aさんの希望に沿ってできる限り力になりたいと思っているが、住宅ローンや教育費の負担があり、金銭的な支援は難しい状況にある。
なお、甲土地は、地元の信頼できる不動産業者によれば、「現状有姿で、9,500万円(35万円/u)程度で売却することができる。この地域では、100u程度の整形地がおおよそ40万円/uで売買されている」とのことである。

Aさんは、リフォーム資金を工面するために庭部分を売却する場合、甲土地はどのような残し方をするべきか。また、できればこれからも広い庭で趣味の園芸を楽しみたいとの希望があり、庭部分を残したままリフォーム資金を調達して甲建物に住み続ける方法はないものか、FPであるあなたに相談することとした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.リフォーム資金を工面するために庭部分を売却する場合、甲土地のうち売却する部分と残す部分は、どのように分割すればいいと思いますか。
3.Aさんの希望である庭部分を売却せずにリフォーム資金を調達して甲建物に住み続けるには、どのような方法が考えられますか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【Aさんの自宅(甲土地、甲建物)の概要】


【Aさん、夫Bさんの親族関係図】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲物件は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、子CさんはS市に住む意向はないが、将来的にAさんに介護が必要な状況が発生した場合に、どのように対応する意向があるか、自動車の駐車スペースが必要となるかどうかも確認しておきたい。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、甲土地の一部売却をする際も問題なく売却可能か、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。

2. リフォーム資金を工面するための甲土地の分割(庭部分の売却)

建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接している必要がある(接道義務)ため、庭部分を全て売却する場合でも、残す部分が接道義務を果たすかどうかを確認することが必要。

また、リフォーム費用に必要な資金は800万円であるが、単に800万円に相当する土地面積分だけを売却すると、譲渡所得税や譲渡費用により800万円を下回ってしまうため、それら諸費用を考慮して売却部分を決定することが必要。
居住用財産の3,000万円の特別控除は、自宅の建物を取り壊して更地にした敷地を譲渡する場合でも適用可能だが、当初から庭であった場合には適用不可。)

本問の場合、Aさんはできれば庭での園芸を楽しみたい希望もあるため、庭部分の一部のみ売却するか、駐車スペース部分を売却しつつリフォーム時に玄関を北側に変更する等の対応も考えられる。

3. 甲土地の庭部分を売却せずにリフォーム資金を調達して甲建物に住み続け方法

Aさんが庭部分を売却せずにリフォーム資金を調達して甲建物に住み続けるということであれば、Aさんがリバース・モーゲージやリースバックによりリフォーム資金を調達することを提案する。

リバースモーゲージは、すでに保有している住宅を担保に、一定額の融資を受けるローンであり、返済はせずに借入者の死亡時に住宅を処分して返済資金に充当する(配偶者が遺された場合はそのまま居住可能で、配偶者死亡時に返済)。
リバースモーゲージを利用すると、自宅はあっても金融資産が少ない高齢者が、自宅に住み続けながら自由な資金を借り入れられるため、遺産を残す必要が無い場合に有効。
ただし、リバースモーゲージは年齢制限(申し込み時に60歳〜80歳までが平均的)があり、さらに、想定よりも長生きすることで融資額では不足するリスクがある。

また、リースバックは所有している住宅を一旦売却し、その後購入した側がその住宅を賃貸住宅とし、元の所有者が入居して家賃を支払う仕組み。リースバックの場合、自宅を売却後そのまま賃貸借するため担保の設定や借入は無く、所有権は移転することから、資金の使途に制約がなく活用しやすいという特徴がある。

本問の場合、Aさんは公的年金を収入とした生活を送っており、自己資金も1,000万円あることから、リバース・モーゲージの長生きリスクもある程度カバー可能であり、所有権の移転にこだわりが無ければリースバックでも問題ないと思われる。

4. 関与すべき専門職業家

甲物件の一部売却における、土地・建物の所有権移転登記等については司法書士、課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。
なお、甲物件の測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】ぜくしあ FP1級実技試験体験記2023年2月4日試験

【note】サロンパス 2023.2.4 FP1級実技面接試験CPart2面接

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