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2023年2月5日実技part1

2023年2月5日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、大都市圏近郊のS市内において、ターミナル駅を中心とした商業地域内に甲土地と乙土地を所有し、個人で不動産賃貸業を営んでいる。甲土地上には賃貸マンションを建設して賃貸しており、立地が良好なことから空室はなく、年間5,000万円の家賃収入(不動産所得3,000万円)を得ている。乙土地は、アスファルト敷きの月極駐車場として利用しており、一定の収入を得ているが、乙土地の固定資産税・都市計画税の負担を考えると収益性は高くない。
Aさんは、毎年の所得税の負担が大きいと感じており、何か軽減する方法がないかと考えていたところ、金融機関の担当者から「法人を設立して所得の分散を図ってはいかがですか。その際には、ご融資を前向きに検討させていただきます」との話があり、興味を持っている。
また、乙土地については、地元の不動産業者から「乙土地にテナントビルを建築しませんか。弊社は、30年間の一括借上げシステムを採用しており、安定した不動産所得を得られ、相続対策上も有利になります」との提案を受けている。Aさんは、テナントビルを建築する場合、その名義は個人、法人のどちらがより望ましいのか判断がつかないでいる。

【資産承継について】
Aさんは、S市内の戸建て住宅で妻Bさん(68歳)と二女Dさん(40歳)の3人で暮らしているが、築40年が経過して老朽化が進んでおり、今後リフォーム費用もかかることから、戸建て住宅(土地建物、時価1億円)を売却して、駅近の分譲マンション(販売価格8,000万円)への住み替えを検討している。住み替えた分譲マンションは、ゆくゆくは二女Dさんに承継したいと思っている。
また、賃貸不動産からの収入は、将来的には長女Cさん(44歳)、二女Dさんの2人が均等に得られるようにしておきたいと考えている。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん(68歳) :青色事業専従者。Aさんと自宅で同居している。
長女Cさん(44歳):専業主婦。会社員の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。
二女Dさん(40歳):会社員。Aさんと自宅で同居している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 1億5,000万円
2.有価証券: 1億円
3.自宅
 (1)土地(280u) : 8,000万円
 (2)建物 : 500万円
4.賃貸マンション
 (1)甲土地(600u) : 1億5,000万円
 (2)建物 : 8,000万円
5.月極駐車場(乙土地、700u) : 1億6,500万円

合計 : 7億3,000万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約2億3,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足、相続税・所得税の軽減対策

(1)生命保険の活用(法人契約だとより軽減効果有り)
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)贈与税の配偶者控除の活用
(4)法人の設立と法人への不動産の賃貸

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度の活用
(3) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(4) 贈与税の配偶者控除の活用
(5) 配偶者居住権の設定

3. 所得税対策としての法人化

◆メリット
・賃貸収入は法人のものとなるため、法人税の比例税率と所得分散による所得税軽減効果有り。
⇒法人設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの場合不動産所得3,000万円であり、税負担のメリットを享受できると思われる。
・相続発生の際、不動産ではなく株式の相続となるため、純資産価額方式による評価となっても相続税負担の軽減効果有り。またより分割しやすい資産となるため、スムーズな遺産分割効果有り。
◆デメリット
・法人側には不動産取得による登録免許税・不動産取得税、オーナー側には保有不動産の法人への譲渡による譲渡所得税の負担有り。
株式の散逸により不動産の帰属が曖昧になる可能性有り。
・賃貸収入は法人のものとなるため、オーナーが自由に使えるお金に制限がかかるようになる(役員報酬の範囲内)。

また、不動産賃貸業を法人化する場合、土地の名義は個人のままとし、建物のみ法人に譲渡することで、賃貸収入のみ法人に移行する方法を提案する。
法人は個人の土地を借りる形となるため、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、借地権の認定課税を避けることができる。さらに、土地は貸宅地となり、相続時には自用地価額の80%相当額として評価されるため、相続税対策にもなる。
法人からは個人に地代を支払うが、家賃収入に比べれば低額であり、多くの所得を法人に移行することが可能。
建物のみであれば法人の資金負担も少なく、簿価が時価と大きな乖離がなければ、簿価で譲渡することで個人側にも譲渡所得が発生しない

4. テナントビルを建築する場合の名義(個人・法人)

テナントビルを個人名義で建築した場合、一括借上げによる不動産収入も個人名義となってしまうため、多額の不動産所得が計上され、高額の税負担が発生するリスクがある。
これに対して法人名義で建築した場合、他の不動産とともに全て法人名義としての不動産収入となり、法人税の比例税率による税負担軽減のメリットを教授可能と思われる。

4. 自宅の住み替えと均等な遺産分割対策

居住用財産の買換え特例により、売った家より買った家のほうが高ければ課税繰り延べ、逆に売った家のほうが買った家より高い場合は、差額に長期譲渡所得として20.315%課税(買った家相当額は課税繰り延べ)される(買換え特例は所有期間10年超が適用条件のため、自動的に長期譲渡所得となる)。

本問の場合、居住中の自宅が1億円で買換え先の分譲マンションが8,000万円であるため、差額2,000万円に対する20.315%の課税となる。

居住用財産の譲渡所得の特例には、ほかに3,000万円の特別控除と軽減税率の特例の併用があり、買換え特例とは選択適用となる。軽減税率の特例を受けた場合、課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は所得税10.21%・住民税4%、6,000万円超の部分は所得税15.315%、住民税5%となる。

土地の取得価額が不明な場合は、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができるため、概算取得費:1億円×5%=500万円
よって、1億円−500万円−特別控除3,000万円=6,500万円を長期譲渡所得として税額計算することになる。
従って、ざっくり計算しても、6,000万円×14%>2,000万円×20% であるため、買換え特例を適用する方が有利と思われる(ただし、取得費が分かる資料がある場合には別途検討が必要)。

また、賃貸不動産からの収入について、将来的には長女Cさんと二女Dさんの2人が均等に得られるようにするためには、賃貸収入を全て法人に集約して同数の株式を贈与または相続させることで、法人からの配当として均等に収入を得られるようにすることが提案できる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税・所得税の軽減対策・資産承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

◆この試験問題の公開体験談

【note】ルーク FP1級実技面接レポート 2023/02/05 PART1

【note】かずや!FP1級技能士 1級 FP実技試験 2023年2月5日PART1

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