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2023年2月5日実技part2

2023年2月5日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(60歳)は、首都圏近郊のK市の中心商業地であるK駅前通りに所在する甲土地(地積135u)の一部と甲土地上にある甲建物(RC造6階建て賃貸ビル、店舗・事務所)の一部を所有している。甲土地は、3筆に分筆され、現在、Aさん、弟Bさん(57歳)と、他界した兄Cさんの妻であるDさん(65歳)の3人がそれぞれ単独で所有している。甲建物は、Aさん、弟Bさん、Dさんの共有で、それぞれの持分は3分の1である。甲建物は現在満室で、賃料はAさんと弟Bさんが共同で経営する不動産管理会社が諸経費と管理費を控除し、残りを所有者3人に月額80万円ずつ均等に配分している。
もともと甲土地は、35年前にAさんの父親が知人の紹介で購入したものであり、その2年後に甲建物を建築した。父親は生前、「自身の相続時、自宅は同居している長男Cに、甲土地と甲建物は二男Aと三男Bに相続させる」と明言していた。「自宅のほうが価値は高いが、AとBは納得してほしい」とまで言われていたが、遺言書を作っておらず、10年前に父親が亡くなったとき、兄Cさんは、甲土地と甲建物の3分の1の権利を当然のことのように主張
してきた。兄Cさんは、小さい頃から年の離れたAさんと弟Bさんを軽視する傾向が強く、理不尽な物言いが多いことから、Aさんと弟Bさんは兄Cさんが大嫌いだった。このときも、Aさんと弟Bさんは猛反発したが、当時存命していた母親の肩入れもあり、結果的に兄Cさんは、自身の主張を押し通し、都心部にある実家のほか、甲−3の土地と甲建物の持分3分の1を取得してしまった。
その兄Cさんが、2022年1月、突然事故で亡くなり、甲−3の土地と甲建物の持分3分の1は兄Cさんの妻であるDさんが単独で相続した。
先月、Aさんと弟Bさんのもとに、Dさんの代理人と名乗る弁護士のEさんが現れ、Dさんからとする次のような申出が伝えられた。「相続で取得した甲−3の土地と甲建物について、今後、継続して所有する意思がないので、ぜひAさんとBさんで買い取ってほしい。金額については土地・建物合わせて総額1億円でお願いしたい」というものだった。これを聞いた弟Bさんは激昂し、「私たちから盗んだ不動産を返しに来たのかと思ったら、1億円を出せだなんて、とんでもない話だ。びた一文も払う気はない」と、けんもほろろに追い返した。Aさんも同席していたが、弟Bさんの気持ちがわかるので、あえて止めなかった。
その後、Eさんから、「Dさんは、Aさん、Bさんと争うことを望んでいない。どのような形ならよいか要望を聞かせてほしい。もし買い取ってもらえないのであれば第三者に譲渡する用意があるので、了承してほしい」という内容の書面が届いた。Aさんはどのように対応したらよいかわからず、FPであるあなたにアドバイスを求めることにした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.Aさんは甲−3の土地と甲建物の持分を買い取ったほうがよいでしょうか。また、提示された総額1億円という価格の妥当性についてどのように思いますか。
3.Aさんは、Dさんから届いた書面に対して、どのように返答したらよいでしょうか。
4.甲土地の前面道路の路線価(1,340千円)と側道の路線価(390千円)が大きく異なっていることについて、どのような理由が考えられますか。また、甲−3の土地の相続税評価額と固定資産税評価額の算出方法について教えてください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地の概要】


・甲土地(甲−1、甲−2、甲−3)
地目:宅地 地積(合計):135u 価格水準(相場価格):1,815,000円/u
※甲−1はAさん、甲−2は弟Bさん、甲−3はDさんがそれぞれ単独所有している。

・甲建物
1990年4月建築 RC造6階建て 店舗・事務所ビル 延べ面積:690u
固定資産税評価額(2022年度):6,000万円
※甲−1、甲−2、甲−3にまたがって建築されている。
※Aさん、弟Bさん、Dさんが各3分の1の持分で共有している。

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲物件は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、Dさんは今後継続所有するつもりがないことから買取りを打診してきているが、それなりの不動産収入を得られている甲−3の土地と甲建物の持分を譲渡する理由があるか、確認しておきたい。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、甲−3の土地と甲建物の持分を買い取る場合を想定し、購入する時期・金額等についてあらかじめ不動産業者と接触して周辺事情を把握しておくことが必要。

2. 甲−3の土地と甲建物の持分の買い取りの是非と価格の妥当性

配偶者は常に法定相続人となり、それ以外の親族は、子・直系尊属・兄弟姉妹の順に、先の順位者がいない場合に、法定相続人となる。
よってに土地と建物の持分の所有者に相続が発生した場合、法定相続人が複数人にわたる可能性があり、より権利関係の処理が難しくなる可能性が高いことから、感情的な面は別として、できるだけ早期に土地と建物の持分の買い取りを進める方が良いと思われる。

買取価格の妥当性に関しては、 甲−3の土地と甲建物の持分をそれぞれ確認すると、以下の通り。
甲−3の土地:45u×価格水準1,815,000円/u=約8,100万円
甲建物の持分:6,000万円×1/3=2,000万円
従って、提示された買取価格1億円は、甲−3の土地約8,100万円と甲建物の持分2,000万円の合計額であると思われる。

甲建物の賃貸収入が月80万円×3人分=240万円であることを考慮すると、買取価格1億円は3年半程度で回収できることから、相続発生のリスクを考慮すれば買取りを検討してよい金額だと思われる。

3. 代理人経由で届いた書面に対する回答

Dさん側は争うことを望んでおらず、希望を把握したいとしているため、買取価格に関しては交渉の余地が十分にあると思われる。
買い取ること自体はAさん・Bさんに大きなメリットのあることであるため、「不動産鑑定士に適正な評価額を算定してもらったうえで買取りを検討するため、その結論が出るまでは第三者への譲渡を待って欲しい」と回答することを提案する。

4. 土地の前面道路と側道の路線価が異なる理由、相続税評価額と固定資産税評価額の算出方法

延べ面積の上限=土地面積×その土地の容積率 だが、容積率は、前面道路の幅が12m未満の場合に、用途地域によって制限される。
住居系用途地域の場合……前面道路幅×4/10
その他の用途地域の場合…前面道路幅×6/10
この計算式結果と指定容積率を比べて、小さいほうが容積率の上限となる。

よって甲−3の土地の前面道路幅は4mであり、商業地域であることから、4m×6/10=240%<指定容積率600% であることから、容積率の上限は240%となる。
従って、甲−1と2に比べて大幅に容積率が低く、甲−3単体では有効活用が難しい土地である。このことから、土地の前面道路と側道の路線価が大きく異なっていると思われる。

なお、相続税路線価は公示価格の8割程度が目安で、固定資産税評価額は公示価格の7割程度が目安となる。
また、甲−3は正方形や長方形ではないいわゆる不整形地だが、路線価方式では、宅地の路線価をもとに、その形状に応じて奥行価格補正率等の調整率を適用した金額で評価するため、調整後の評価額は宅地の路線価よりも低い評価額となる可能性が高い。これに対し、固定資産税評価額の計算過程において、不整形地等の個別事情は織り込まれているため、固定資産税評価額に更に宅地の形状に応じた補正を行う必要はない。

5. 関与すべき専門職業家

甲−3の土地と甲建物の持分を買い取る際における、正確な測量と境界の明示および登記については土地家屋調査士測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士土地の所有権移転登記等については司法書士、不動産所得の課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。
また、本問では土地建物の権利交渉が重要な要素であるため、法律判断に基づく交渉代行については弁護士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】ルーク FP1級実技面接レポート 2023/02/05 PART2

【note】かずや!FP1級技能士 1級 FP実技試験 2023年2月5日PART2

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