問16 2023年5月基礎
問16 問題文
わが国の物価指標に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1) 消費者物価指数(CPI)が算出の対象としている財には、原油などの原材料、電気部品などの中間財、建設機械などの設備機械は含まれない。
2) 消費者物価指数(CPI)では、季節変動を除去した季節調整値を、「総合」「生鮮食品を除く総合」「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」などの8系列について公表している。
3) 企業物価指数(CGPI)は、企業間で取引される財の価格について基準時点の年平均価格を100とした指数であり、公表対象月が2022年5月以後のものは2020年が基準時点となっている。
4) 原油価格などの輸入品価格の上昇は、その上昇分が国内の製品価格にすべて転嫁されなかった場合、すべて転嫁された場合と比べ、転嫁されなかった相当分だけGDPデフレーターは高くなる。
問16 解答・解説
経済指標に関する問題です。
1) は、適切。消費者物価指数(CPI)は、一般消費者(家計)が購入する商品やサービス価格の動向を示した指数です(総務省が毎月発表)ので、原材料・中間財・設備機械は対象外です。
原油等の原材料、電気部品等の中間財、建設機械等の設備機械を算出対象とするのは、企業間や貿易で取引される商品の取引価格の変動を示す企業物価指数です(日銀が発表)。
2) は、適切。消費者物価指数では、衣料品のセールのような毎年同様の値動きの影響である季節変動を除去した季節調整値を、「総合」「生鮮食品を除く総合」「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」等の8系列について公表しています(残りは財・サービスの2指数とラスパイレス連鎖基準方式による3指数)。
※ラスパイレス連鎖基準方式:基準時点と比較時点の価格比を基に指数算出し、前年の消費支出割合を基に算出した当年の指数を毎年掛け合わせていく方式。
3) は、適切。企業物価指数(CGPI)は、企業間や貿易で取引される商品の取引価格の変動を示す指数で、基準時点である2020年の年平均価格を100とした指数です。日銀は、電気自動車の進展や環境意識の高まりにといった経済・産業構造の変化に対応するため、2022年5月からそれまでの2015年基準から2020年基準に移行しました。
4) は、不適切。GDPデフレーターは、物価変動による名目値の影響を調整する価格指数で、国内生産における全ての物・サービスの付加価値の価格水準(輸入原材料の価格を除く)を示す指数です。
「GDPデフレーター=名目GDP/実質GDP」で算出されますが、GDP(国内総生産)は、一定期間に国内で生産された財やサービスなどの付加価値の総額のことですから、名目GDPや実質GDPを算出する際には、輸入額を差し引きます。
ここで、原油等の輸入品価格の上昇により輸入額が増加した場合、物価変動分を調整しない名目輸入額は増加しますが、物価変動分を調整する実質輸入額は増加しません。このため、輸入額の増加は名目GDPの減少につながり、価格上昇分が国内価格に全て転嫁されるまでは、GDPデフレーターの下落要因となります。
GDPデフレーターは物価水準を示す指標の一つではありますが、上記のような特徴もあるため、体感的には物価上昇していても、指数上は物価が下落していることになってしまうことがあります。
よって正解は、4
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