問53 2023年9月応用

問53 問題文と解答・解説

問53 問題文

Aさんが、定年後もX社の再雇用制度を利用して厚生年金保険の被保険者として同社に勤務する場合、Aさんが原則として65 歳時に受給することができる公的年金の老齢給付について、次の【1】および【2】に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入する
こと。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は2023年度価額(新規裁定者)、在職老齢年金による支給調整は2023年度価額の支給停止調整額に基づいて計算するものとし、在職定時改定は考慮しないものとする。

【1】 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
【2】 在職老齢年金による支給調整後の老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。

〈条件〉
(1) 厚生年金保険の被保険者期間(65歳到達時)
・総報酬制導入前の被保険者期間:228月
・総報酬制導入後の被保険者期間:283月

(2) 平均標準報酬月額および平均標準報酬額
(65歳到達時、2023年度再評価率による額)
・総報酬制導入前の平均標準報酬月額:326,000円
・総報酬制導入後の平均標準報酬額 :487,000円

(3) 報酬比例部分の給付乗率
・総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
・総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481

(4) 経過的加算額
1,657円×被保険者期間の月数−□□□円×{1961年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数/480}
※「□□□」は、問題の性質上、伏せてある。

(5) 加給年金額
397,500円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

(6) 総報酬月額相当額
380,000円

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問53 解答・解説

老齢基礎年金・老齢厚生年金の支給額に関する問題です。

老齢基礎年金額の計算式は、以下の通りです。
老齢基礎年金=満額の基礎年金×(納付済月数+免除分調整月数)/(加入可能年数×12)

まず、2023年度の満額の基礎年金額は、795,000円。
Aさんには免除期間がなく、納付済月数は厚生年金の被保険者期間の合計として、228月+283月=511月ですが、これは厚生年金の被保険者期間です。
老齢基礎年金は、20歳〜60歳までの40年間(480ヶ月)が加入可能年数の上限となります(昭和16年4月2日以降に生まれた場合)。

Aさんは、大学在学中は国民年金に任意加入せず、卒業後就職してからはずっと厚生年金に加入しています。
よって、上限の480ヶ月から、在学中の未加入期間29月を差し引けば、保険料納付済期間を算出できます。

以上により、
Aさんの老齢基礎年金=795,000円×(480月−29月)/(40年×12)
          =746,968.7…円 ⇒ 746,969 円(円未満四捨五入)

従って、(1)老齢基礎年金の年金額は、746,969円

次に、老齢厚生年金額の報酬比例部分の計算式は以下の通りです。
報酬比例部分=(平均標準報酬月額×乗率×総報酬制導入前までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×乗率×総報酬制導入後の被保険者期間の月数)

また、問題文では「本来水準による価額」を回答するように指示されていますので、「新乗率」を使って計算します。
※実際の年金計算では、新乗率(本来水準額)と旧乗率(従前額保障)それぞれで計算し、高い方が支給額となります。

問題にあるように、Aさんの総報酬制導入前までの平均標準報酬月額32.6万円・被保険者月数228月で、総報酬制導入後の平均標準報酬額48.7万円・被保険者月数283月です。
=326,000円×7.125/1000×228月+487,000円×5.481/1000×283月
=529,587円+755,396.901円
=1,284,983.901円 ⇒ 1,284,984円(円未満四捨五入)

ここで、年金支給開始年齢に到達した後も、厚生年金の被保険者として勤務する場合には、在職老齢年金の仕組みにより、総報酬月額相当額と基本月額の合計が支給停止調整開始額(2023年度価額48万円)を超えると、年金の一部または全部が支給停止となります。
なお、基本月額は老齢厚生年金額の12分の1(加給年金・繰下げ加算・経過的加算による加算分は除く)です。

Aさんの総報酬月額相当額は38万円で、年金月額(基本月額)は107,082円(1,284,984円÷12)ですから、「総報酬月額相当額+基本月額」は487,082円となり、48万円を超えるため、年金の一部が支給停止となります。
支給停止額(年額)=(総報酬月額相当額+基本月額−支給停止調整開始額)×1/2×12
          =(38万円+107,082円−48万円)×1/2×12=42,492円
よって、在職老齢年金の支給額=1,284,984円−42,492円=1,242,492円

次に経過的加算額ですが、これは定額部分の年金額と老齢基礎年金の差額です。
定額部分の年金は、生まれた年によって、被保険者期間の月数の上限が異なりますが、1946年(昭和21年)4月2日以後生まれの場合には上限480月として計算されます。
Aさんの被保険者期間は、228月+283月=511月>480月ですので、480月として計算されます。

また、経過的加算額の算出において、基礎年金相当部分は「1961年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金の被保険者期間」ですから、Aさんの厚生年金の被保険者期間511月のうち、60歳以降の60月分は除かれます。
よって計算式は
=1,657円×480月−795,000円×(511月−60月)/(40年×12)
=48,391.25円 →48,391円(円未満四捨五入)

よって、老齢厚生年金の基本年金額=報酬比例部分+経過的加算
=1,242,492円+48,391円
=1,290,883円

最後に配偶者の加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上で、65歳未満の配偶者がいる場合には、老齢厚生年金に加給年金が加算されます。
支給条件は、上記に加えて、配偶者と生計維持関係にあること(配偶者の年収850万円以下)、配偶者が厚生年金の被保険者期間20年以上の老齢厚生年金等を受給していないこと、もあります。
Aさんの厚生年金の被保険者期間は511月(42年7ヶ月)ですが、Aさんが65歳時に既に妻Bさんは65歳であるため、加給年金の支給対象外です。

よって、Aさんが受け取る老齢厚生年金額は、1,290,883円 です。

以上により正解は、(1)746,969(円) (2)1,290,883(円)

問52          第2問

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