2024年2月11日実技part2
2024年2月11日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(59歳)は、東京都S区内に所有する戸建て住宅で妻Bさん(58歳)と2人で暮らしている。先日、1人娘であり、2年前に結婚した長女Cさん(26歳)から、住まいに関する相談があった。家電メーカーに勤めている長女Cさんは、同じ会社に勤める夫Dさん(27歳)と社宅で2人暮らしをしており、半年後に第一子を出産予定である。
【長女Cさんからの相談内容】
「出産後しばらくは産休・育休を利用する予定だけど、できるだけ早く職場復帰して共働きを続けたい。でも、今の社宅は会社までの通勤時間が長く、実家からも遠い。出産後は子育てをしながらの共稼ぎになるからいろいろとお母さんの手を借りたいが、そのためには、実家の近くに住むか同居をしたいと思っていて、夫も賛成してくれている。
ただ、賃貸物件で暮らす場合、セキュリティのしっかりしたマンションタイプで、1LDK以上の広さがほしい。その条件で探してみたけど、最近、賃貸物件の賃料が上がっているみたいで、実家の近くで見つけるのは難しそう。いっそのこと家を買うことも考えたけど、マンションの価格も上がっていて、多額の住宅ローンを組まないといけない。住宅ローンには、収入合算やペアローンという仕組みもあるらしいけど、よくわからない。
だから、夫とも相談して、自分たちとしてはできれば同居をさせてもらえればありがたいと思っている」
【Aさんが所有する自宅の概要】
・土地:地積150u、第一種住居地域、指定建蔽率60%、指定容積率200%、最寄駅から徒歩7分、固定資産税評価額5,000万円
・建物:木造2階建て、築30年、延べ面積130u、4LDK(1階・2階にトイレあり、キッチン・浴室は1階のみ)、固定資産税評価額400万円
Cさん夫婦との同居について、妻Bさんは「もうじき孫にも会えるなんて楽しみだわ」と喜んでおり、Aさんも異存はない。ただ、今の間取りのままだとDさんが気疲れしてしまわないか気になっている。また、築30年が経って修繕が必要な箇所が目に付くようになっていたこともあり、Aさんは、自宅を完全分離型の二世帯住宅に建て替えることを考えている。
なお、Aさんは、上場企業の役員を務め、金融資産は現在1億円程度あり、二世帯住宅の建築資金は全額負担するつもりでいるが、将来の相続を見据えて、建替え後の二世帯住宅を長女Cさんとの区分所有にしてはどうかと思っている。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.住宅ローンの収入合算やペアローンとはどのような仕組みですか。それぞれのメリット、デメリットを教えてください。
3.Aさんが建築資金を全額負担し、建て替えた二世帯住宅を長女Cさんとの区分所有にした場合、課税上、どのような問題が生じますか。
4.長女Cさんからの相談に対し、あなたはAさんにどのようなアドバイスをしますか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
住宅ローン控除が適用されると、各年の住宅ローンの年末残高に応じて所得税の税額控除を受けられるため、控除の恩恵を最大限受けるには、収入・所得を確認した上で適切な借入金額を設定することが必要となる。
また、住宅に関しては社宅・賃貸・マンション購入・実家同居という複数の選択肢がある状態であるため、それぞれの選択肢を前提とした今後のライフプランやその資金計画等についても確認が必要。
本問の場合、社宅を出ることを検討している長女夫婦それぞれの収入・所得に加えて、自宅の建替え資金を負担しようとしているAさんの収入・所得も確認することが必要となる。特にAさんは上場企業の役員であり高収入である可能性が高いことから、借入可能な金額も多額であると思われる。
(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、自宅の建替えを検討していることから、土地の境界を改めて確認しておくことが必要となる。
また、長女は産休・育休後にできるだけ早く職場復帰することを希望しているが、実家周辺の保育園の評判や待機児童問題があるか、確認しておきたい。
2. 住宅ローンの収入合算・ペアローンの仕組みとメリット・デメリット
◆収入合算の仕組みとメリット・デメリット
住宅ローンの収入合算とは、1つの住宅ローン契約を、夫婦による連帯債務や連帯保証で締結する方法で、夫婦で返済義務を負うことから、夫または妻単独の住宅ローン契約と比べて借入金額を増額することが可能。
連帯債務による収入合算は、夫婦が連帯して同一の債務を負うため、住宅ローン控除も夫婦で適用可能となるが、購入する自宅を主債務者単独名義にして、ローンを夫婦共同で返済すると、夫が妻から贈与を受けたとして、贈与税の課税対象となることがある。また、住宅ローン控除も主債務者のみしか適用されない。
これに対し連帯保証による収入合算は、主債務者が支払いできなくなった場合に、はじめて連帯保証人に返済を求めることができるため、住宅ローン控除の適用や団体信用生命保険への加入は主債務者のみとなる。
◆ペアローンの仕組みとメリット・デメリット
夫婦がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンを契約し、持分を取得した場合、贈与税の課税対象外となり、住宅ローン控除も夫婦で適用可能。夫婦それぞれが主たる債務者として住宅ローンを組み、互いに相手の連帯保証人となるため、それぞれが単独で住宅ローンを受ける条件を満たす必要がある。
通常、夫婦で収入の差がある家庭は収入合算を選択し、夫婦双方がある程度以上の収入がある家庭はペアローンを選択することが多く、本問の場合も長女夫婦は同じ勤務先で年齢も近く、長女は出産後も共働きの継続を希望していることから、ペアローンを組む方が住宅ローン控除の恩恵を最大限得られると思われる。
3. 建築資金を全額負担して建て替えた二世帯住宅を長女との区分所有にした場合に生じる課税上の問題
二世帯住宅を2戸の住宅とみなし、親子がそれぞれの名義で区分登記した場合、持分の移転が贈与税の課税対象となる可能性がある。また、小規模宅地の特例は、二世帯住宅については内部が独立していても適用可能だが、それぞれの居住部分を区分建物所有登記し、親子が別生計の場合には、敷地全てについて特例が適用されない。
このため、税務面だけで考えれば、二世帯住宅は親子いずれかの単独名義か、親子の共有名義にしておくほうがメリットがある。
4. 長女からの相談に対するアドバイス
Aさんが二世帯住宅の建築資金を全額負担して区分所有する方法は、贈与税や相続税負担上のデメリットがあるため、子夫婦が建築資金の一部を負担して資金負担割合に応じた持分登記する方法が提案できる。この場合、住宅取得資金を親から贈与することも検討できるが、親名義の自宅のリフォーム費用であり受贈者所有の建物ではないことから、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税は適用対象外となる。
そこで、まず実家の建物を親から子に譲渡して子名義とし、子の自宅のリフォーム資金として親から贈与する形態とすることで、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税が適用可能となると思われる。現状の実家は固定資産税評価額は400万円であり、子夫婦でも十分に負担可能な額であり、建物を親子で共有持分登記しておけば将来的に小規模宅地の特例も適用可能。
また、親からの贈与に関しては相続時精算課税と贈与税の基礎控除も合わせて活用することで、生前贈与加算を回避可能。
5. 関与すべき専門職業家
二世帯住宅を区分所有にする際の、建物の所有権移転登記等については司法書士、測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士、課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士が適当。
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