2011年1月30日実技part1
2011年1月30日実技part1
part1 問題文
●設
例●
Aさん(65歳)は、都内で皮膚科の診療所を経営している。開業時より自由診療に力を入れており、現在も増患が続いている。昨年の診療報酬は社会保険診療収入100百万円、自由診療報酬150百万円の計250百万円で、必要経費を除いた所得が72百万円もあるため多額の税負担に頭を悩ませている。
Aさんの家族構成は、下記のとおりである。長男は、現在、Aさんと同居しており大学病院に勤務医として勤めているが、将来はAさんの診療所を継ぐ予定で、仮にAさんが先立った場合の妻の生活の世話を見てもらいたいと考えている。Aさんは知人の開業医から医療法人設立の話を聞き、長男へ診療所を引き継ぐ際にうまく使えないかと考えている。長女は現在大手企業の会社員と結婚しており何不自由なく生活をしているが、最近夫の会社の業績が悪化しており将来の生活に不安を感じている。二女は重度身体障害者でAさんと同居しており、Aさんは将来の二女の生活の基盤として特定贈与信託の利用を検討している。
Aさんの財産の概要は下記のとおりで、財産の合計は正味1,198百万円あり、現時点での相続税の総額(各種特例適用前)は、一次・二次合わせて344百万円と試算されている。
〈Aさんの家族構成〉
Aさん(65歳) :皮膚形成外科開業医 妻
(62歳) :専業主婦
長男 (32歳) :大学病院勤務医・既婚 長女(35歳) :専業主婦
二女
(30歳) :独身
〈Aさんの財産の概要〉
(いずれも相続税評価額。宅地については、小規模宅地等の評価減適用前)
診療所関係(土地・建物)
640百万円 銀行借入金
156百万円
自宅(土地・建物)
300百万円
(診療所関係)
金融資産
184百万円
ゴルフ会員権
30百万円
賃貸用不動産
200百万円
資産合計 1,354百万円
負債合計 156百万円
part1 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・所得税と相続税の軽減対策
(1) 医療法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税低減効果有り)
(2) 生命保険の活用
(3) 医療法人の設立後の役員退職金支払い(退職所得控除による所得税低減効果も有り)
2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 代償分割
(3) 長女への賃貸用不動産の生前贈与(相続時精算課税の活用)
3. 医療法人設立のメリット・デメリット
医療法人の設立には、都道府県知事の認可が必要であるほか、通常の株式会社と異なり、剰余金の配当禁止や都道府県知事への決算等の届出義務があることに注意が必要。
◆ メリット
・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
・ 法人税の比例税率による所得税負担の低減
・ 親族を役員にすることによる所得分散効果
・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等
◆ デメリット
・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加
・ 解散時の残余財産が国庫等に帰属 等
4. 特定贈与信託の検討
特定贈与信託は、特別障害者(重度の心身障害者)の生活の安定を図るために、親族等が、信託銀行等に金銭等の財産を信託すること。
信託銀行等は、信託された財産を管理・運用し、特別障害者の生活費や医療費等にあてるため、信託財産の一部から定期的に金銭を支払う。また、特定信託を利用する場合、6千万円まで贈与税が非課税となる。
二女は重度身体障害者のため、本制度を利用できると思われることから、ゴルフ会員権30百万円と金融資産30百万円の合計6千万円分までは、贈与税が非課税となる特定贈与信託の利用を提案できる。
● FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。
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