2011年2月5日実技part1
2011年2月5日実技part1
part1 問題文
●設
例●
Aさん(70歳)は、卸売業を営む中小企業X社のオーナー社長である。
X社は、急激な景気の悪化により業績が低迷し、急な回復は認められない状況ではあるが、過去の内部留保が厚く不動産の含み益もあり、財務内容は現在のところ悪くはない。
今後も厳しい経済環境が続きそうであるが、Aさんはそろそろ長男(42歳。現在はX社の常務取締役)に経営をまかせたいと思い、事業承継対策についての検討を始めた。
Aさんは、昨年に妻を亡くしており、長男家族とはよい関係にあるので、将来的には長男家族と同居したいと考えている。また、Aさんの子は長男のほかに長女(44歳。専業主婦)がおり、親子・姉弟間の仲もよく、長男が事業を承継することについて長女に異論はない。
Aさんの財産は下記のとおりであり、相続税の総額は約120百万円(小規模宅地等の評価減適用後)との試算結果が出ている。
Aさんは、今後の経済情勢を見据えると、借入金圧縮についてのプランニングや資金計画等が会社経営に関する重要な課題であると認識するとともに、その後の事業承継、財産分割、これらを含めた相続税対策全般に至るまで、広くアドバイスを求めている。
また、金融資産についても、X社への貸付金の処置も含めて、今後どのような運用が最適であるか、アドバイスを受けたいと思っている。
〈X社の概要〉
※含み益が業務用不動産に200百万円、遊休不動産に100百万円ある。
株主構成
:Aさん60%、長男10%、長女10%、会社従業員等20%
発行済株式総数
:10万株 従業員数 :20人
株式評価上の会社規模:「中会社」 株式評価額:3,000円
〈Aさんの財産の概要(相続税評価額)〉*土地については、小規模宅地等の評価減適用前
自宅土地(400u)
120百万円
〃
建物
20百万円
長女の自宅敷地(240u)
80百万円
X社株式(6万株)
180百万円
投資信託
20百万円
現預金
50百万円
X社への貸付金
30百万円
合計
500百万円
part1 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1) 株式の公開(上場)
(2) 生命保険・金庫株の活用
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 代償分割
(4) 長男へのX社株式の譲渡
3. 借入金圧縮についてのプランニングや資金計画等の検討
X社は業績低迷中のため、出来るだけ借入金の圧縮を進め財務体質を強化していくことが必要。遊休不動産(簿価200百万円)には100百万円の含み益があるため、売却により借入金300百万円を返済可能だが、Aさんの相続開始前に返済を行うと、営業外収益の増加により、X社株式の評価額が上がってしまうため、相続開始後または長男への事業承継後に返済を行うことを提案する。
4. X社への貸付金の処置も含めた金融資産の運用方法の検討
Aさんの貸付金以外の300百万円の借入は、遊休不動産の売却により返済可能だが、Aさんの貸付金30百万円も返済しようとすると、X社の現預金は50百万円から20百万円に大きく減ってしまい、キャッシュフローに影響が出てくる可能性がある。
X社には多額の利益剰余金があるものの、現預金の割合は少なめであるため、現金が不足しないよう留意することが必要。
よって、Aさんの貸付金は当面返済せずに、X社の業績が回復したら返済を検討する。Aさんの金融資産も、将来の相続税の納税資金となるため、国債等で低リスク運用を行うことを提案する。
●FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。
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