2014年2月8日実技part2
2014年2月8日実技part2
part2 問題文
●設 例●
首都圏近郊のK市に住むAさん(84歳)は、地元で代々農業を営んでいる。Aさんは妻Bさん(80歳)とともに、長男Cさん(54歳)家族(妻と子供2人)と同居している。ほかに娘2人がいるが、いずれも嫁いで、K市を離れて生活している。長男Cさんは、都内の企業で役員を務めており、農業を継ぐ意思はない。Aさんは数年前までは元気で農作業に精を出していたが、一昨年の秋に体調を崩して入院し、現在は自宅で療養中である。原因は内臓の疾患であり、早期回復のめどはたっていない。その間、農作業の一部は、妻Bさんと長男Cさんが休みを利用して手伝っていたが、長男Cさんより、負担が大きく継続は難しいのでこの際廃業し、農地を整理してはどうかと言われている。
この度、市街化区域内にあるAさん名義の甲土地(地目:畑、公簿面積3,000u、実測面積3,200u、15年前に生産緑地に指定済)について、西側隣接地でスーパーを経営している大手系列のX商事より、生産緑地を解除して、スーパーの駐車場として2,000uを10年契約で貸してもらえないか、という申出が、知り合いのY不動産の社長Dさんを通じてあった。
地代は、整地、舗装工事をX商事が負担するということで月額52万円とのことであった。また、敷金として2カ月分支払うとのことだった。これまでも甲土地については定期借地で貸してほしいという話がいくつかあったが、生産緑地に指定されていたため断っていた。
Aさんは生活費のほか治療費の負担もあり、農業を続けることは年齢的にも体力的にも難しいと考えているため、この話に乗ろうと思っている。ただ、生産緑地の解除が可能なのか、どのような手続が必要なのかよくわからない。そこでファイナンシャル・プランナーに相談することにした。
なお、東側隣地(乙土地)の所有者Eさんとは、Eさんの父親の相続時(3年前)に境界の立ち会いをし、甲土地が公簿面積よりも200uの増歩があるということで確定しているが、登記面積の変更はしていない。また、Aさん所有の農地のうち生産緑地の指定を受けているのは甲土地だけである。
(相談事項)
1.申出を受けるかどうか決めるには、どのようなことを検討しなければならないか。
2.生産緑地の指定の解除を前提にX社からの申出を受けるとした場合には、賃貸借契約締結までにどのような手続が必要か。
3.生産緑地の指定が解除されるとした場合、X社からの申出を受けてもよいか。
※K市の開発行為の基準面積は500u
※現在の甲土地の固定資産税額、都市計画税額の合計は年額6万円
※当地域の固定資産税課税標準は評価額の60%
part2 ポイント解説
顧客の抱える問題に対する解決策
1.X商事からの申し出に関わる問題点、メリット・デメリット
◆問題
甲土地の有効活用について、将来の相続も見据え、妻Bさんや長男Cさんの意向を確認する必要がある。
生産緑地解除後の固定資産税・都市計画税の負担増加に、X商事の申し出で対応できるかどうか。
以下、固定資産税率1.4%(標準税率)、都市計画税率0.3%(制限税率)として試算。
甲土地の相続税評価額=150千円×3,200u=4億8,000万円
固定資産税評価額=4億8,000万円×60%=2億8,800万円
固定資産税=2億8,800万円×1.4%=403万2,000円
都市計画税=2億8,800万円×0.3%=86万4,000円
⇒合計489万6,000円 となり、地代収入52万円×12ヶ月=624万円で対応可能。
相続後は甲土地が娘2人も含めた共有持分となる可能性もあるため、娘2人の希望も確認しておきたい。
◆メリット
甲土地の有効活用により、地代月額52万円(税負担を勘案すると月10万円程度)を確保することができる。地代の確保により、Aさんの治療費や今後の生活費に充当することができる。
また、Bさんの相続財産における金融資産の割合を増大させることができるため、将来の遺産相続の際、妹2人への遺産分割を容易にすることができる。
X社の申し出を受けるには、生産緑地の解除を行う必要があるが、一度解除すると2度と生産緑地の指定を受けることはできず、固定資産税・都市計画税負担額が重くなる(所有する全ての土地が対象となるため、一部だけ指定解除とはならない)。
よって、X社との定期借地契約が終了した場合の有効活用も検討しておくことが必要。
また、甲土地に関する相続税の納税猶予を受けている場合、20年の営農条件を満たしていないため、猶予打ち切りとなる可能性が
ある。
2.生産緑地の解除を前提とした手続き
◆生産緑地の解除
生産緑地解除のために、まずは市町村に生産緑地買取請求を行う必要がある。市町村が買取請求に応じない・他者への買取斡旋が不調、となった場合に、生産緑地の解除が可能となるため、申請から解除までには数ヶ月程度を要する。
◆農地の転用
市街化区域内の場合、農地を転用する際には、農地法により農業委員会への届出が必要となる。
◆開発許可
駐車場に建物を建築する場合には、都道府県知事等の開発許可が必要(単なる屋外駐車場にするだけであれば許可不要)。
◆土地地積更生・土地地目変更登記
実測面積が公簿面積と異なっている場合、土地地積更正登記により、登記簿上も実測面積とすることが可能。
本問の場合、増歩分の200uも登記することで、第三者に対抗可能(ただし、固定資産税も増える)。
また、地目を農地から雑種地に変更する土地地目変更登記も必要。
3.生産緑地解除による申し出の受諾可否
Aさんの体調や、長男Cさんの意向を踏まえれば、基本的には申し出を受けた方が良いと考える。
ただし、X社の提案では、有効活用できるのは全体3,200uのうち、2,000uまでとなるため、残りの1,200uの活用方法を検討する必要がある。
固定資産税・都市計画税の負担増には、X社の申し出で対応できるが、地代収入は大きくはないため、X社に甲土地全体の定期借地とならないか、もしくはY不動産社長に他に定期借地の借り手がいないか、打診した上で、検討することを提案する。
FPと関連法規
生産緑地の解除申請や登記に関しては司法書士、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
本問では、顧客は土地の有効活用方法について不安を感じており、生産緑地の解除や登記を行う際には司法書士の協力を仰ぎ、X社との定期借地契約については、Y不動産の協力を仰ぐべきとえます。
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