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2014年2月9日実技part1

2014年2月9日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(65歳)は、個人で不動産貸付業を営んでいるが、所得税や住民税の負担が大きいことに悩んでいる。また、Aさんは最近体力の衰えを感じ、自分の相続について考えるようになった。Aさんの推定相続人は、妻Bさん(62歳)、長女Cさん(37歳)、長男Dさん(35歳)および二女Eさん(27歳)の4人である。子供たちの状況は、以下のとおりである。

(1)長女Cさんには配偶者と2人の子供(10歳と7歳)がおり、現在は社宅住まいである。自宅を購入したいと思っているが、これから子供の教育費負担も増えるため、Aさんからの資金援助を期待している。

(2)長男Dさんは会社員で、Aさん夫婦と同居しているが、今年の秋に結婚予定であり、Aさんの自宅の敷地に新居を建てる予定である。その際、敷地内に別棟として建てるか、Aさんの自宅を二世帯住宅として建て替えるか迷っている。

(3)二女Eさんは、1年前から英語の勉強のため米国に留学しており、最近は、米国で就職することも考えるようになった。なお、Aさんは海外投資を兼ねて米国にマンションを購入し、そのマンションに二女Eさんを無償で住まわせている。また、Aさんは、二女Eさんに留学資金を援助したいと思っている。

Aさんは、おおまかな考えとして、自宅は妻Bさんと長男Dさんに共有で相続させ、マンションは妻Bさんに、アパートは長男Dさんに、米国マンションは二女Eさんに相続させればよいと思っている。現金預金については各相続人に均等に相続させればよいと思っている。顧問税理士からは「奥さんには相続させないほうがよいのでは」と言われたが、Aさんはその意味がよくわからない。
なお、現時点でAさんが死亡した場合の相続税の試算額は、約160百万円(配偶者の税額軽減適用前・小規模宅地等の評価減適用前)である。このような状況で、Aさんは、自身の相続や資金援助その他について、どのようにしたらよいか相談したいと思っている。また、Aさんは、上場不動産投資信託(J-REIT)にも興味があり、そのメリットやデメリットについて教えてほしいと思っている。
Aさんおよび妻Bさんの財産の概要は、以下のとおりである。

【Aさんの所有財産〈相続税評価額〉】
(土地評価はすべて小規模宅地等の評価減適用前)
自宅 敷地(330u)   :120百万円
家屋(築45年木造)   : 2百万円
マンション 敷地(500u):150百万円
建物(築20年RC造)  :100百万円(年間家賃収入24百万円)
アパート 敷地(300u) :100百万円
建物(築10年軽量鉄骨造): 20百万円(年間家賃収入8百万円)
米国マンション     : 30百万円
現金預金        :130百万円
終身保険(受取人・妻B): 10百万円
合 計          662百万円

【妻Bさんの所有財産】(実父からの相続で取得)
マンション 200百万円(年間家賃収入20百万円)
現金預金   80百万円
合 計    280百万円

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1)生命保険の活用
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税低減効果有り)
(4)法人の設立後の役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)

2.遺産分割対策・事業承継対策
(1)遺留分を考慮した遺言の作成
(2)管理会社の活用による不動産賃貸業の継続

3. 小規模宅地の特例適用の詳細
小規模宅地の特例では、特定居住用は240uを上限に80%減額、貸付事業用は200uを上限に50%減額となる(ただし、平成27年1月1日以後は、特定居住用は330uに拡大)。
また、特定事業用は400uを上限に80%減額となる。
なお、小規模宅地の特例を複数の宅地に適用する場合、一定の限度面積の制限があり、どの宅地に適用するかは納税者が選択できる。
本問の場合、自宅の評価額が高額なため、自宅に特例適用することが望ましいと思われるが、特定居住用宅地は、配偶者以外が取得する場合には、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことが必要なため、相続させる予定の長男Dが、別棟として自宅を建てると、別居として要件を満たさない。
しかし、二世帯住宅については、平成25年税制改正により、内部が独立していても適用可能となったため、同居親族として特例適用対象となる。

4. 二次相続まで考えた対策に関する説明
二次相続とは、例えば夫死亡後に妻と子ども2人が遺産相続し、その後妻死亡時に発生する相続のこと。
一次相続では、配偶者の税額軽減により相続税負担が軽くても、二次相続では配偶者の税額軽減がなく、また法定相続人も1人少なくなっていることから、二次相続の方が相続税負担が増加する場合がある。
また、配偶者が不動産を相続すると、二次相続時には子どもそれぞれに相続権が発生するため、遺産相続争いが発生する可能性がある。
顧問税理士が「奥さんには相続させないほうがよいのでは」と述べたのは、上記の理由からと思われる。

5. 円満な財産分割・資金援助のアドバイス
まず、長男Dに関しては、小規模宅地の特例が適用できるよう、互いのプライバシーに配慮した二世帯住宅の建築及び自宅敷地とアパートの相続を提案する。
また、長女Cに関しては、相続時精算課税や直系尊属による住宅資金の非課税制度を利用しながら、自宅購入資金を贈与し、相続の際はマンションの相続を提案する。
二女Eに関しては、教育資金一括贈与の非課税制度を利用しながら留学資金を贈与し、相続の際は米国マンションの相続を提案する。
最後に、妻Bに関しては現金預金を中心に相続させることで、一時相続時には配偶者の税額軽減を受けつつ、二次相続時に分割しやすい金融資産を残すことを提案する。
さらに、妻Bはマンションを保有しているが、遺言で二女Eを相続人として指定しておけば、子3人の相続財産はほぼ同程度となる(ただし、二女が米国就職した場合、日本国内不動産の所有を望まない場合もあるため、相続発生まで金融資産中心の財産としておくことを提案する)。

6. 上場不動産投資信託(J-REIT)のメリット・デメリット
◆メリット
実物不動産とは異なり、少額から購入することもできるため、一度に購入せずに、ドルコスト平均法で少しずつ購入し価格変動の影響を抑えることも可能。
また、少しずつ売却することもできるため、資金流動性が高い

◆デメリット
株式市場に上場されているため、投資法人の投資先の状況とは別に、株式市場の騰落状況の影響を受けるリスクがある。
また、通常の株式投資信託と異なり、解約請求や買取請求ができない(クローズド・エンド型)ため、換金の際は市場での売却が必要となる。このため、場合によっては売却したいときに買い手がなく、売却できない事態も有り得る。

 FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。
ただし、税負担について多くの論点があることから、具体的な税金の質問等に関しては税理士の協力を仰ぐことが必要と思われます。

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