2014年2月9日実技part2
2014年2月9日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(70歳)は、都内の会社を定年退職後、妻(68歳)と首都圏の近郊(JRの駅から徒歩7分)の戸建住宅(相続税評価額70,000千円、Aさん名義)に居住し、アパート(3カ所、相続税評価額200,000千円)と金融資産(40,000千円)を保有している。Aさんには、長男(40歳)と長女(35歳)の2人の子がいる。
長男は会社員で、妻、子(2人)とともに、Aさんの自宅近くのマンション(長男名義)に居住し、財産として自宅マンションのほか、金融資産5,000千円を保有している。長男は、勤務する会社の業績不振のため、ここ数年、給与がほとんど増加せず、住宅ローンの返済等もあって生活はやや厳しい状況にある。
長女は他家に嫁ぎ、夫(会社員)、子(1人)とともに都内のマンション(夫名義)に居住している。
最近、Aさんの親戚や知人、友人などに認知症を発症したり、病気で長期入院したりする人が多くなってきた。Aさんは、今は元気だが、将来、認知症などで判断能力が衰えたときには、長男を成年後見制度における後見人にしたいと考えている。
Aさんは、長男一家への生活資金支援と相続対策の一環として、収益状況のよい甲アパートを長男に贈与する予定である。甲アパートの贈与については、暦年課税を適用すると、長男の贈与税の負担が重いので、新聞で知った相続時精算課税を初めて利用することによって、贈与税の負担額を極力軽減したいと思っている。
なお、甲アパートの建物(1年前に新築したもの、現在空室なし)の建設資金の一部として調達した銀行借入金が15,000千円あり、甲アパートの贈与の際にこの借入金をどう処理したらよいかがわからない。
《相談事項》
1.長男を、Aさんの判断能力が衰えたときの後見人にするためには、Aさんは現段階においてどのような手続をしておく必要があるのか。また、将来、長男は、Aさんの後見人として、Aさんの入院費等の捻出のためにAさん所有の不動産を売却できるのか。
2.長男に対して相続時精算課税を適用して甲アパートを贈与する際に、贈与税の負担を極力軽減する観点から、次の(1)および(2)の問題は、どのようにしたらよいか。
(1)甲アパートの建物のみの贈与をしても、税務上の問題はないか。
甲アパートの土地建物の全部を贈与すると贈与税の負担が重くなるので、甲アパートの建物のみを贈与してもよいか。それが可能な場合、土地(建物の敷地)はどうするか。
(2)銀行借入金は長男に引き継がせるかどうか。
甲アパートの贈与に際し、銀行借入金については、長男に引き継がせる方法(負担付贈与)と長男に引き継がせない方法(負担付贈与でなく通常の贈与)のいずれがよいか。
part2 ポイント解説
顧客の抱える問題に対する解決策
1.成年後見制度の手続きと長男による財産処分
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した場合に、財産管理や契約締結の支援を行う制度。
法定後見制度と任意後見制度の2つがあり、法定後見制度では家庭裁判所で後見人を選任するのに対し、任意後見制度では本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人を選任し、公正証書で任意後見契約を締結しておくことができる。
なお、実際に任意後見契約の効力が生じるのは、本人の判断能力が低下して、本人や配偶者等の請求により、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時からとなる。
よって、まずは長男を後見人とする任意後見契約を締結しておくことが必要。
なお、後見人は、自身の責任において、被後見人の財産を処分することが認められているが、法定後見の場合には、被後見人の居住用財産の処分に際して、家庭裁判所の許可が必要。
2.子供たちへの贈与税を考慮した対策
(1)アパートの建物のみ贈与する場合
通常、親子や親族間で土地を使用貸借している場合、その土地を第三者に貸し付けていても、相続税評価額は自用地として評価されてしまう。
しかし、建物を生前贈与した後に相続が発生し、建物の借主が贈与以前から相続時まで変わっていなければ、使用貸借していても貸家建付地として評価減することが可能。
よって、アパートの建物だけを長男に贈与し、土地は使用貸借とすれば、生活資金に余裕のない長男は家賃収入を得られ、相続時まで借主が変わらなければ、相続時の評価額も貸家建付地となる。
※アパートの土地・建物を両方生前贈与すれば、相続時の評価額は当然貸家建付地となるが、土地に関しても贈与税が課されてしまうのに対し、建物だけの贈与であれば相続時精算課税の2,500万円特別控除までは、贈与税負担を回避できる。
※アパートやマンション等の集合住宅の場合、借主の入退去は頻繁に発生しうるため、管理会社等にサブリースすることで、相続発生まで借主が変更していないとすることが可能。
(2)銀行借入金の取扱い
銀行借入金を長男に引き継がせる負担付贈与とする場合、贈与税の計算は、贈与財産から銀行借入金残高を差し引いて計算する。ただし、土地・建物の評価額は「通常の取引価格」(時価)となる。
これに対し、銀行借入金を長男に引き継がせない通常の贈与とする場合、贈与税は贈与財産のみで計算し、土地・建物の評価額は相続税評価額となる(建物の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0)。
本問の場合、建物の時価評価額が、固定資産税評価額よりも非常に高く、銀行借入金残高を差し引いても、なお固定資産税評価額よりも高い。
よって、通常の贈与とする方が税負担は軽くなる。
FPと関連法規
相続時精算課税における贈与税額等、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、成年後見人の選定や任意後見契約については、司法書士や弁護士を紹介すべきです。
本問では、顧客は主に長男への生前贈与における税負担と、任意後見契約に不安を感じており、具体的なプランの実施について検討する際は、各専門家の協力を仰ぐべきと考えます。
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