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2014年2月16日実技part1

2014年2月16日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(75歳)は、工作機械部品製造業のX社の社長である。X社は設立以来、様々な荒波を乗り越え、現在では毎期の経常利益が約3億円の地元では有数の優良企業である。
X社は社員を全国から募っているが、最終工程の検収作業は地元の主婦がパートで行っており、地元住民にとっても大きな収入源となっている。
Aさんには妻(73歳)と子供が2人いるが、長男(45歳)は後継者候補として5年前からX社の常務取締役に就任している。一方、長女(40歳)は他家に嫁ぎ専業主婦をしている。
また、長男には息子が2人、長女には娘が2人いる。
X社の株式は、現在のところAさんが90%所有しており、これをいかにして長男に移転させるかが大きな課題となっているが、Aさんは自分が元気な間は自分が株主でいたいと考えている。
また、長女からは、X社の経営にはまったく興味はないが、将来的には現在遊休となっているX社所有の土地(時価1億6千万円、含み損5千万円を持つ)がほしいと言われており、Aさんはこれに応じるつもりである。
こういった問題について、同業の社長からは相続の際に金庫株制度を使い、その対価をうまく工夫すれば解決できると言われたが、Aさんはその意味がよくわからないでいる。
さらに、Aさんは長男と長女からAさんの孫への教育資金の贈与を依頼されており、これも応じる予定でいるが、最終的に誰にどの財産を残すかについて悩んでいる。
Aさんには自宅とX社株式のほかに定期預金が1億5千万円ほどある。Aさんは定期預金以外に金融資産として運用するには何がよいか気になっているが、極力リスクは取りたくないと思っている。
現時点でのAさんの相続財産は約6億5千万円(相続税評価額)であり、うち、自宅の評価は4千万円(小規模宅地等の評価減適用後)、相続税の見積額は一次相続と二次相続を合わせて約1億3千万円(配偶者の税額軽減適用後)である。

● Aさんの家族構成
Aさん(75歳):X社社長
妻  (73歳):専業主婦
長男 (45歳):X社常務取締役
長女 (40歳):専業主婦

● X社の概要
資本金    :1,000万円
発行済株式総数:20万株
株主構成   :Aさん90%、その他外部株主10%
一株当たり相続税評価額:2,500円(大会社、類似業種比準価額)

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1)株式の公開(上場)
(2)保有する不動産の売却
(3)生命保険・金庫株の活用
(4)自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(5)非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2.遺産分割対策・事業承継対策
(1)遺言の作成
(2)遺留分に関する民法の特例の活用
(3)代償分割
(4)後継者へのX社株式の譲渡

3. 金庫株の検討
企業が自社株式を相続人から買い取ることにより、相続人はその買い取り額を相続税の納税資金とすることが出来る。ただし、特定の者から買い受ける場合には株主総会の特別決議が必要であり、取得額は分配可能額の範囲内という制限がある。
譲渡価額と資本金等の額の差額についてはみなし配当所得として総合課税で最高43.6%の税負担、資本金等の額と取得価額の差額については譲渡所得として申告分離課税で所得税15%・住民税5%となる。ただし、相続開始から3年以内にX社に譲渡した場合は、みなし配当課税は適用されず、譲渡価額と取得価額の差額が譲渡所得(所得税15%・住民税5%)となり、相続税の取得費加算も適用できる。

4. 金庫株の活用による相続税・遺産分割対策
非上場株式の贈与税の納税猶予制度の活用により、発行済議決権株式等の総数等の3分の2までは贈与税の負担無しで生前贈与可能
よって、約13万株は長男に生前贈与しつつ、当面の間はAさんは残り5万株の株主となる。
さらに、将来的には残りの株式をX社に譲渡しつつ、対価で遊休地を買い取ることで、X社は含み損を顕在化し類似業種比準価額を引き下げることができる(類似業種比準価額は簿価計算するため)。
自宅と定期預金(孫への教育資金贈与後)については、まずは妻が相続することで小規模宅地の特例と配偶者の税額軽減を適用し、二次相続時に長男が自宅を相続する場合には、長女への代償分割を検討する。

5. 長男・長女の子供4人の教育資金
教育資金の非課税特例では、直系尊属から教育資金を一括贈与された場合、受贈者ごとに1,500万円まで非課税となる(学校等に直接支払われる入学金や授業料等ついては1,500万円まで、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円まで)。
資金の使用使途が限定されており、自由度は低くなるが、贈与後3年以内に贈与者が死亡した場合でも、相続税の課税財産に加算されないため、確実に教育資金として贈与することが可能。
長男・長女ともに子供は2人ずつのため、定期預金から各人に同額を贈与することで不満なく財産分与が可能と思われる。

6. 金融資産の運用提案
極力リスクを取らずに運用する金融商品として、個人向け国債がある。
個人向け国債は発行から1年経過後には中途換金可能(国が額面金額での買い取りを保証している)であるため、金利が上昇しても、元本割れしない。
また、変動10年タイプであれば、金利変動にも対応するため、金利上昇リスクにもある程度対応できる商品と言える。

 FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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