問53 2019年5月応用
問53 問題文
Aさんが、定年退職後もX社の再雇用制度を利用して厚生年金保険の被保険者として同社に勤務し、65歳で退職して再就職しない場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の(1)および(2)に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2018年度価額に基づいて計算するものとする。また、妻Bさんは、62歳から特別支給の老齢厚生年金を受給しているものとする。
(1)老齢基礎年金の年金額はいくらか。
(2)老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
【1】 厚生年金保険の被保険者期間
・総報酬制導入前の被保険者期間 : 252月
・総報酬制導入後の被保険者期間 : 255月(65歳到達時点)
【2】 平均標準報酬月額・平均標準報酬額(65歳到達時点、2018年度再評価率による額)
・総報酬制導入前の平均標準報酬月額 : 35万2,000円
・総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 46万1,000円
【3】 報酬比例部分の給付乗率
・総報酬制導入前の乗率 : 1,000分の7.125
・総報酬制導入後の乗率 : 1,000分の5.481
【4】 経過的加算額
1,625円×被保険者期間の月数−□□□円×1961年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数/(加入可能年数×12)
※「□□□」は、問題の性質上、伏せてある。
【5】 加給年金額
38万9,800円(要件を満たしている場合のみ加算すること)
問53 解答・解説
老齢基礎年金・老齢厚生年金の支給額に関する問題です。
老齢基礎年金額の計算式は、以下の通りです。
老齢基礎年金=満額の基礎年金×(納付済月数+免除分調整月数)/(加入可能年数×12)
まず、平成30年度の満額の基礎年金額は、779,300円。
Aさんには免除期間がなく、納付済月数は厚生年金の被保険者期間の合計として、252月+255月=507月ですが、これは厚生年金の被保険者期間です。
老齢基礎年金は、20歳〜60歳までの40年間(480ヶ月)が加入可能年数の上限となります(昭和16年4月2日以降に生まれた場合)。
Aさんは、大学在学中は国民年金に任意加入せず、卒業後就職してからはずっと厚生年金に加入しています。
よって、上限の480ヶ月から、在学中の未加入期間33月を差し引けば、保険料納付済期間を算出できます。
以上により、
Aさんの老齢基礎年金=779,300円×(480月−33月)/(40年×12)
=725,723.1…円 ⇒ 725,723 円(円未満四捨五入)
従って、(1)老齢基礎年金の年金額は、725,723円
次に、老齢厚生年金額の報酬比例部分の計算式は以下の通りです。
報酬比例部分=(平均標準報酬月額×乗率×総報酬制導入前までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×乗率×総報酬制導入後の被保険者期間の月数)
問題にあるように、Aさんの総報酬制導入前までの平均標準報酬月額35.2万円・被保険者月数252月で、総報酬制導入後の平均標準報酬額46.1万円・被保険者月数255月です。
=352,000円×7.125/1000×252月+461,000円×5.481/1000×255月
=632,016円+644,318.955円
=1,276,334.9…円 ⇒ 1,276,335 円(円未満四捨五入)
次に経過的加算額ですが、これは定額部分の年金額と老齢基礎年金の差額です。
定額部分の年金は、生まれた年によって、被保険者期間の月数の上限が異なります。
・昭和 9年4月2日〜昭和19年4月1日生まれ:上限444月
・昭和19年4月2日〜昭和20年4月1日生まれ:上限456月
・昭和20年4月2日〜昭和21年4月1日生まれ:上限468月
・昭和21年4月2日以後生まれ :上限480月
Aさんの被保険者期間は、252月+255月=507月ですが、昭和34(1959)年生まれなので、上限480月として計算されます。
また、経過的加算額の算出において、基礎年金相当部分は「1961年4月以後で20歳以上60歳未満の厚生年金の被保険者期間」ですから、Aさんの厚生年金の被保険者期間507月のうち、60歳以降の60月分は除かれます。
よって計算式は
=1,625円×480月−779,300円×(507月−60月)/(40年×12)
=54,276.8…円 ⇒ 54,277 円(円未満四捨五入)
よって、老齢厚生年金の基本年金額=報酬比例部分+経過的加算
=1,276,335 円+54,277 円
=1,330,612 円
最後に配偶者の加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上で、65歳未満の配偶者がいる場合には、老齢厚生年金に加給年金が加算されます。
支給条件は、上記に加えて、配偶者と生計維持関係にあること(配偶者の年収850万円以下)、配偶者が厚生年金の被保険者期間20年以上の老齢厚生年金等を受給していないこと、もあります。
Aさんの厚生年金の被保険者期間は507月(42年3ヶ月)ですが、妻Bさんは62歳から特別支給の老齢厚生年金を受給済みです。しかし、妻Bさんの厚生年金の被保険者期間は1980年4月〜1990年3月までの10年間と、2017年4月から62歳になった2024年2月までの6年10ヶ月の、合計で16年10ヶ月ですので、受給している特別支給の老齢厚生年金は、被保険者期間20年未満ということになります。
よって、Aさんは加給年金の支給対象です。
よって、Aさんが受け取る老齢厚生年金額は、1,330,612 円+389,800 円=1,720,412 円 です。
以上により正解は、(1)725,723(円) (2)1,720,412(円)
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